守大助受刑者に5000万円損賠命令
仙台市泉区の北陵クリニック(閉院)で
平成12年、患者5人に筋弛(し)緩(かん)剤が投与され、
1人が死亡した事件で、
被害者で意識不明の状態が続いている
大島綾子さん(19)と両親が
元准看護師、守大助受刑者(37)
=殺人罪などで無期懲役確定=に5000万円の損害賠償を
求めた訴訟の判決が
27日、仙台地裁であり、
潮見直之裁判長は請求通り5000万円の支払いを守受刑者に命じた。
守受刑者は投与を否定していた。
確定した刑事裁判の判決によると、
守受刑者は12年2〜11月、同クリニックに入院していた
大島さんら5人を殺害しようとして、筋弛緩剤を点滴に混入し、
無職女性=当時(89)=を殺害したほか、
4人を意識不明にさせるなどした。
守受刑者は無罪を主張して上告したが
最高裁は2月に上告を棄却、無期懲役が確定した。
Yahoo!ニュース
二年八カ月に及ぶ検察と弁護側の激しい応酬が続いた法廷に、
裁判長の「無期懲役」を告げる声が響いた。
筋弛緩(しかん)剤点滴事件で仙台地裁が2004年3月30日、
守大助被告(32)に言い渡した判決。
無実を訴え続けた守被告は、裁判長をにらみつけた。
胸をなで下ろす捜査関係者。
しかし、判決も動機をはっきり示せない。
患者の命を守るはずの医療機関でなぜ…。
娘が今も植物状態の母親は、傍聴席で涙をぬぐった。
弁護団は控訴の方針を示し、真相をめぐる論争はさらに続く。
植物状態となり、今でも意識が戻らない少女を
はじめとする被害者の遺族や家族。
事件の舞台となり閉鎖に追い込まれた北稜クリニックの関係者。
そして事件の疑いで捜査されながら立件されなかった患者や遺族たち。
准看護師守大助被告(32)の逮捕から約三年三カ月。
運命をほんろうされた多くの人が、悔
しさやとまどいを胸に無期懲役の判決を聴いた。
「本当なら娘は四月から高校一年生…」。
被害者の一人とされる少女は意識不明のまま十五歳になった。
「物が二重に見える」。
2000年10月当時11歳だった少女は
虫垂炎の疑いでクリニックに入院、
抗生剤点滴中にそうつぶやいた後、容体が急変。
一命は取り留めたが、脳に障害が残った。
現在の体重は二五キロ。
筋肉を動かさないため手足はやせ細った。
父親(55)は昔のアルバムを見返した。
「こんな笑顔をしていたのか」。言葉を失った。
「極刑を望む気持ちは変わらない」と唇をかんだ。
クリニックは、守被告の逮捕から約三カ月後、
患者数が激減し閉鎖を余儀なくされ施設は人手に渡った。
実質的経営者だった半田康延東北大教授(58)は
数億円の借金を返済しながら傍聴を続けた。
公判の中で「病院が医療過誤を隠すためにでっち上げた」と
弁護側に指弾された。
「警察に相談すれば大騒ぎになり、
病院がつぶれることも分かっていた。
妻(事件当時の副院長)も私も精神状態がおかしくなりそうだった」
と振り返る。
複雑な心境で公判を見つめる家族もいた。
宮城県警はクリニックが作成した計二十人の急変患者リストなどを基に捜査。
最終的な立件は五件となった。
リストにあり、死亡した当時五歳の男児も立件から漏れた。
「息子はなぜ死んだのか」。
両親の疑問が置き去りにされたまま公判は進んだ。
「この裁判では何も分からない。
事件だったのかどうか誰か教えてほしい」。
両親にとって判決は通過点にすぎない。
▼差守大助被告の弁護団の話
不当な判決で許し難い。控訴せざるを得ない。
初めに結論ありきの判決だ。
証拠評価を誤って、一件ずつ吟味すべきなのに
一件やったから残りもクロと認定した。
間違った判決を覆すべく、これからも頑張っていく。
●「当然の判決」と評価
▼仙台地検の加藤昭特別刑事部長の話
(判決は)証拠を客観的に調べており当然の判決だ。
弁護側の反証にも適正な判断をしており、
真実が認められた。
(鑑定試料の全量消費は)全面的に適切とは言い難い。
今後参考にしていきたい。
●守被告が不満口に こんなんでいいのか
准看護師の守大助被告(32)は判決の瞬間、
みけんにしわを寄せ、細い首を傾けながら被告席に腰を下ろした。
鋭いまなざしで裁判長をにらんだ。
休廷中には「こんなんでいいのか」と不満を漏らした。
正午の休廷後、
接見した弁護士に守被告は「こんなんでいいんですかね」
「涙も出ません」と落ち着いた口ぶりで話したという。
さらに「ほかの証人のことを信じられるのに、
何でぼくの言うことは信じられないのか。
でも通過点ですよね」と控訴に同意した。
この日の守被告は笑みを浮かべて会釈をしながら入廷。
無罪で自宅に帰れると信じ、拘置所の自室を整理していた。
主文言い渡しに背筋を伸ばしたまま、微動だにしない守被告。
ジャケットのポケットに手をやり、
弁護士の前の席にどすんと腰を下ろし、
長めの髪を左手でかき上げた。
青白くひきつった表情がのぞく。理由の朗読。
まばたきを繰り返し、首をひねった。
じっと目を閉じたまま、「早く帰りたい」との思いがかなわなかった無念を、
自らに言い聞かせるようにつま先で絶えずリズムを取っていた。
特別傍聴席の守被告の母親は、
主文言い渡しと同時にわっと泣き崩れ、
隣に座った守被告の恋人の肩に寄り掛かった。
●綱渡りの立証に理解示す
【解説】仙台の筋弛緩剤点滴事件で、
仙台地裁が守大助被告(32)に言い渡した無期懲役の判決は、
筋弛緩剤混入の目撃証言など直接の証拠がなく、
状況証拠を積み重ねた綱渡りともいえる検察側の立証を、
最大限くみ取った形となった。
今回の判断の特徴は、
起訴事実五件が特異で酷似していることを重視、
「同一犯の犯行と推認できる」という前提を敷いたことだ。
その上で二件について「確実に犯人と認定できる」とし、
守被告の犯行と判断。
これを土台に比較的証拠が薄い事件についても
「犯人が別人とする特段の事情がない」ことを
補強材料として有罪の結論を導いた。
検察側は、事件性については、
患者五人の血清や尿、点滴バッグから
筋弛緩剤の成分を検出した「堅い証拠」(検察幹部)を出した。
だが犯人性は、守被告が一時犯行を認めた自白調書と、
使途不明の筋弛緩剤の存在や空アンプルの証拠隠滅行為、
不審な言動などの状況証拠を重ねてしのいだ。
しかし守被告は四日目に否認に転じている上、
弁護側は「自白は取調官の脅しや誘導の結果」と主張。
状況証拠についても「被告の犯行には直接つながらない」と
弁護側に突かれた。危うい立証だったことは否めない。
判決もこうした乏しい証拠の組み合わせだ。
状況証拠しかない事件での事実認定の手法として、
一つのモデルとなりうるだろうが、弁護側は激しく反発している。
守被告無期懲役 無実の主張断罪
被害家族の悲しみ癒えず:西日本新聞 2004年03月30日掲載
平成12年、患者5人に筋弛(し)緩(かん)剤が投与され、
1人が死亡した事件で、
被害者で意識不明の状態が続いている
大島綾子さん(19)と両親が
元准看護師、守大助受刑者(37)
=殺人罪などで無期懲役確定=に5000万円の損害賠償を
求めた訴訟の判決が
27日、仙台地裁であり、
潮見直之裁判長は請求通り5000万円の支払いを守受刑者に命じた。
守受刑者は投与を否定していた。
確定した刑事裁判の判決によると、
守受刑者は12年2〜11月、同クリニックに入院していた
大島さんら5人を殺害しようとして、筋弛緩剤を点滴に混入し、
無職女性=当時(89)=を殺害したほか、
4人を意識不明にさせるなどした。
守受刑者は無罪を主張して上告したが
最高裁は2月に上告を棄却、無期懲役が確定した。
Yahoo!ニュース
二年八カ月に及ぶ検察と弁護側の激しい応酬が続いた法廷に、
裁判長の「無期懲役」を告げる声が響いた。
筋弛緩(しかん)剤点滴事件で仙台地裁が2004年3月30日、
守大助被告(32)に言い渡した判決。
無実を訴え続けた守被告は、裁判長をにらみつけた。
胸をなで下ろす捜査関係者。
しかし、判決も動機をはっきり示せない。
患者の命を守るはずの医療機関でなぜ…。
娘が今も植物状態の母親は、傍聴席で涙をぬぐった。
弁護団は控訴の方針を示し、真相をめぐる論争はさらに続く。
植物状態となり、今でも意識が戻らない少女を
はじめとする被害者の遺族や家族。
事件の舞台となり閉鎖に追い込まれた北稜クリニックの関係者。
そして事件の疑いで捜査されながら立件されなかった患者や遺族たち。
准看護師守大助被告(32)の逮捕から約三年三カ月。
運命をほんろうされた多くの人が、悔
しさやとまどいを胸に無期懲役の判決を聴いた。
「本当なら娘は四月から高校一年生…」。
被害者の一人とされる少女は意識不明のまま十五歳になった。
「物が二重に見える」。
2000年10月当時11歳だった少女は
虫垂炎の疑いでクリニックに入院、
抗生剤点滴中にそうつぶやいた後、容体が急変。
一命は取り留めたが、脳に障害が残った。
現在の体重は二五キロ。
筋肉を動かさないため手足はやせ細った。
父親(55)は昔のアルバムを見返した。
「こんな笑顔をしていたのか」。言葉を失った。
「極刑を望む気持ちは変わらない」と唇をかんだ。
クリニックは、守被告の逮捕から約三カ月後、
患者数が激減し閉鎖を余儀なくされ施設は人手に渡った。
実質的経営者だった半田康延東北大教授(58)は
数億円の借金を返済しながら傍聴を続けた。
公判の中で「病院が医療過誤を隠すためにでっち上げた」と
弁護側に指弾された。
「警察に相談すれば大騒ぎになり、
病院がつぶれることも分かっていた。
妻(事件当時の副院長)も私も精神状態がおかしくなりそうだった」
と振り返る。
複雑な心境で公判を見つめる家族もいた。
宮城県警はクリニックが作成した計二十人の急変患者リストなどを基に捜査。
最終的な立件は五件となった。
リストにあり、死亡した当時五歳の男児も立件から漏れた。
「息子はなぜ死んだのか」。
両親の疑問が置き去りにされたまま公判は進んだ。
「この裁判では何も分からない。
事件だったのかどうか誰か教えてほしい」。
両親にとって判決は通過点にすぎない。
▼差守大助被告の弁護団の話
不当な判決で許し難い。控訴せざるを得ない。
初めに結論ありきの判決だ。
証拠評価を誤って、一件ずつ吟味すべきなのに
一件やったから残りもクロと認定した。
間違った判決を覆すべく、これからも頑張っていく。
●「当然の判決」と評価
▼仙台地検の加藤昭特別刑事部長の話
(判決は)証拠を客観的に調べており当然の判決だ。
弁護側の反証にも適正な判断をしており、
真実が認められた。
(鑑定試料の全量消費は)全面的に適切とは言い難い。
今後参考にしていきたい。
●守被告が不満口に こんなんでいいのか
准看護師の守大助被告(32)は判決の瞬間、
みけんにしわを寄せ、細い首を傾けながら被告席に腰を下ろした。
鋭いまなざしで裁判長をにらんだ。
休廷中には「こんなんでいいのか」と不満を漏らした。
正午の休廷後、
接見した弁護士に守被告は「こんなんでいいんですかね」
「涙も出ません」と落ち着いた口ぶりで話したという。
さらに「ほかの証人のことを信じられるのに、
何でぼくの言うことは信じられないのか。
でも通過点ですよね」と控訴に同意した。
この日の守被告は笑みを浮かべて会釈をしながら入廷。
無罪で自宅に帰れると信じ、拘置所の自室を整理していた。
主文言い渡しに背筋を伸ばしたまま、微動だにしない守被告。
ジャケットのポケットに手をやり、
弁護士の前の席にどすんと腰を下ろし、
長めの髪を左手でかき上げた。
青白くひきつった表情がのぞく。理由の朗読。
まばたきを繰り返し、首をひねった。
じっと目を閉じたまま、「早く帰りたい」との思いがかなわなかった無念を、
自らに言い聞かせるようにつま先で絶えずリズムを取っていた。
特別傍聴席の守被告の母親は、
主文言い渡しと同時にわっと泣き崩れ、
隣に座った守被告の恋人の肩に寄り掛かった。
●綱渡りの立証に理解示す
【解説】仙台の筋弛緩剤点滴事件で、
仙台地裁が守大助被告(32)に言い渡した無期懲役の判決は、
筋弛緩剤混入の目撃証言など直接の証拠がなく、
状況証拠を積み重ねた綱渡りともいえる検察側の立証を、
最大限くみ取った形となった。
今回の判断の特徴は、
起訴事実五件が特異で酷似していることを重視、
「同一犯の犯行と推認できる」という前提を敷いたことだ。
その上で二件について「確実に犯人と認定できる」とし、
守被告の犯行と判断。
これを土台に比較的証拠が薄い事件についても
「犯人が別人とする特段の事情がない」ことを
補強材料として有罪の結論を導いた。
検察側は、事件性については、
患者五人の血清や尿、点滴バッグから
筋弛緩剤の成分を検出した「堅い証拠」(検察幹部)を出した。
だが犯人性は、守被告が一時犯行を認めた自白調書と、
使途不明の筋弛緩剤の存在や空アンプルの証拠隠滅行為、
不審な言動などの状況証拠を重ねてしのいだ。
しかし守被告は四日目に否認に転じている上、
弁護側は「自白は取調官の脅しや誘導の結果」と主張。
状況証拠についても「被告の犯行には直接つながらない」と
弁護側に突かれた。危うい立証だったことは否めない。
判決もこうした乏しい証拠の組み合わせだ。
状況証拠しかない事件での事実認定の手法として、
一つのモデルとなりうるだろうが、弁護側は激しく反発している。
守被告無期懲役 無実の主張断罪
被害家族の悲しみ癒えず:西日本新聞 2004年03月30日掲載








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